秋山さんとは、以前ほどではないけど、再びよく話をするようになった。下山も運動系のサークルに入って、少しふっきれたようだ。風向きがみんないいほうに向いてる気がして、むしろ気持ち悪いくらいだった。
それでも中沢さんのことは、解決した感じもしないまま、頭の隅に追いやられていた。
そんなある日。
学校からの帰り道、たまたま中沢さんとすれ違った。
その時、思ったこと…やっぱり、あきらめるのは惜しい、という想いだった。実際に会ってみると、こうも簡単に気持ちがぐらついてしまうものか…自分が、信用できなくなっていた。
僕は、自然と立ち止まっていた。そして、止まった時のわざとらしく鳴ってしまった足音に、中沢さんも反応していた。
お互い、同時に振り向いた。
「こんちは。」僕が切り出した。
「久しぶり。」
僕は話をしながら、中沢さんの今思っていることを読んでみようと思っていた。
ところが、なぜかテレパシーが使えなかった。たまに思いっきり疲れていると、テレパシーの感度が落ちることはあるが、今日はそんなことはなかった。それなのになぜ…？
僕はそのせいで、話に詰まってしまった。
「あ、またテレパシー使おうとしてるんでしょ。」
「ヴえっ…?!」
何でバレたんだろう？…もしかして、もう使えないのだろうか…。
「…どうしたの？」「い、いや…。何で、そんなことわかるのかなぁって…。」
「何でって…、前に部屋に来た時、私の言いもしないことまで言ったから、もしかしたらって…。」
「…そんなこと、よく信じるなぁ…。」半ば迷惑そうに、僕はつぶやいた。
「だって、楽しいじゃない。そういうのって。」
そう言って何の悪気もなく笑顔を見せる中沢さんを見てると、怒る気にもならなかった。そういや、そういうの、好きだもんなあ…。天文部に入ったとき、万が一起こるかもしれないと思っていたことが起こってしまったというわけだ。
「あのさ。」彼女が言った。「その、テレパシー、どんなのか教えてくれない？」
「でも…。」僕は次の言葉を発することをためらっていた。しかし「でも」と言ってしまったからには、続きを話すしかない。
「でも、どうしたの？」
「もう、…テレパシーは使えなくなっちゃったから。話すことは…。」
「いいの。私は『話がしたい』んだから。」
「へっ？」
「どこで話そうか？」
そう言って彼女は、学校ではなく公園のあるほうへ歩きだした。僕は思わず、彼女に遅れないように足どりを早めていた。
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