男の人って、やっぱりそういうことで焦っている人が多いのかもしれません。いや、女の子の中にだってそういう人はいます。でも、わたしは今すぐ結婚するわけじゃないし、適当に男の人と仲良くできればいい、って思ってたんです。
今の彼、そして前の彼…二人とも、結局そういう人だったのでしょう。
わたしは、いま目の前にいる彼には、前の彼の時のように、こまごまと弁解しようとは思いません。はっきりと言えない立場…そういう立場に、わたしは今いるんだから、これ以上何も言うことは無いんです。…彼の反応を待つしかないのです。
彼がわたしのことを誤解していたら、これっきりで終わってしまうでしょう。ただ、その誤解は、あくまでもわたしが誤解だと感じているだけにすぎなくて、彼にとって、わたしとの関係が終わってしまうことは、誤解から生じたものではなく、ごく自然な感情から生まれたものなんだ、と言われても否定はできないのです。
しばらく、無言の時間が続きました。…今までの彼との思い出が、頭の中を駆けめぐりました。彼とはもう今日で終わりだと感じていたからかもしれません。いや、もっと言えば、もう今日限りで彼とははっきり別れてしまいたい、と心のどこかで思っていたのかもしれません。うやむやにしてしまうくらいなら、もっとはっきりとしておいた方がいい、と…。でも、彼に発した最後の言葉は、とてもあいまいな表現になってしまったのです。
今となっては、その言葉を取り消すことはできません。わたしはもう、彼にどんな言葉を望んでいるのか、わからなくなってしまいました。
しばらくして彼はわり切った表情で一言、言いました。
「…わかった。」
そう言うと、ふり向いて去っていきました。わたしよりも、もっとあいまいな言い方で…。
わたしはその後、いろいろな解釈をしました。そして最終的に、わたしは結論を出しました。「彼はわたしのことを誤解していたわけではない」と。
しかし、それは、わたしの誤解だったのです。
彼はそのあと、一度もわたしの前に姿を現しませんでした。
(6)へ