僕は、テレパシーを持っている。正確には、テレパシー能力というべきか。
たぶん身についたのは、中学３年の始めの頃だと思う。春休みに入ってから、油断して冷え込んだ夜に布団をけとばしてしまい、思いっきり風邪をひいてしまったのだ。その風邪は意外に長引き、高熱で数日寝込んでしまった。その病床で僕は、見ず知らずの人にこんなことをささやかれた。
────君に、テレパシーを授けてあげよう。
その時は、高熱で頭がボーッとしていて、何が何だかわからなかった。後で聞いた話では、あまりに熱が出ていて医者にも「今夜が峠ですね…」と言われた夜があったらしい。僕がそうささやかれたのも、その夜くらいのことだった。それは生死の境をさまよっていたために見た幻だったのかもしれないし、単なる夢だったのかもしれない。しかし、知っている人の中にはその声の人はいないはずだった。
確かに、テレパシーがあれば、それなりに使い道もあるだろう。けれども、こうして無償でこんな能力をくれるとは…。少々疑い深い性格も手伝って、素直には受け止めていなかった。また「授けてあげよう」などと、頼みもしないのに偉そうな態度で言われて、少し腹立たしいとも感じていた。
そんなわけで、僕はそのテレパシー能力を眠らせたまま、しばらく過ごしていた。
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