一週間ほど経って、だいぶ自分でテレパシーの様々なコントロールができるようになった。これでそろそろ中沢さんの考えてることもわかるだろうと、半ばワクワクしながら教室に入った。
いつもの場所に中沢さんは座っていた。そして、あの男も…。男の名前は茎沢隆というらしい。一見して悪印象はないのだが、僕の嫉妬心が彼に対する印象を悪いものにしていた。
授業が始まって、早速僕は中沢さんに気持ちを集中させた。どうやら、今日のサークルのミーティングのことを考えてるらしい。いろいろと読んでいるうちに、天文関係のサークルらしいことはわかった。しかし、天文関係のサークルは「天文部」と「天文学研究会」とかいう二つがあるはずだった。違いはよく知らないが、とにかくどちらからしい。今日の放課後にミーティングがあるはずだから、調べればすぐにわかるだろう。
それからも何度か、中沢さんの考えてることを読んでみた。ただ、一緒の授業の時に必ずテレパシーを使っていたわけではない。集中力がなかったせいもあるが、あまり気持ちを集中させすぎてると熱が出そうになったりするからだ。もちろん、授業中だと先生の話がほとんど頭に残らないという難点もあった。もともと授業だけに集中して家では勉強しないタチだったから、これは困る。しかし最大の原因は、中沢さんのことを一方的に知りすぎるのもよくないと思っていたからだ。また一人の女の子にのめりこんだりしたら、四年前と同じことだ。できれば、ごく自然にお互いに知り合っていきたい、たとえそれが理想に近いことであるとしても…そう思っていた。
ある日、頭がカーッと熱い感じになって、これは風邪だと思って学校に行くのをやめてしまった。一人で布団にくるまってゴロゴロとしながらテレビをボーッと見ていた。
そのうちに眠くなって昼寝をしてしまった。そして、例の夢を見た。
今日は、いつにも増してはっきりとした夢だ。いつもぼやけて消えてしまう部分もわかるかもしれない。
その夢のストーリーは、時が経つにつれて相当膨れ上がっていた。いつものぼやけるラストシーンも、そのせいで少しずつ遠くなっていった。
僕が「力を授かる」シーンになった。
────君に、テレパシーを授けてあげよう。
ただし────
えっ、ただし？
────ただし、誰かに、君がこの能力を持っていることを知られたら、この能力は失われる。
なるほど、こういうことだったのか。
夢が終わって、ちょっとだけすがすがしくなった気分で目覚めた。外はもう薄暗かったが、ひとまずぼやけた部分の謎は解決した。まだ続きがあるらしいが、今までにないくらいピンボケで、はっきりするにはだいぶ時間がかかりそうだった。
それでも、自分が他人の考えを受信するだけだったら、そう簡単にバレやしないだろう…と、楽観的にとらえていた。
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