それから二日間テレパシーは全く使わなかった。そしてついに天文部のミーティングの日になった。
下山を誘って、部室に向かった。天文部は、いくつかある大きめの共用室のうちの一室の隅っこのほうに、小さく陣取っていた。
何人か部員がいたので、少し緊張しながら他の人たちが来るのを待った。しばらくして、部長らしき人、茎沢、そして中沢さんと揃っていった。
ミーティングが始まるまでの少しの間、中沢さんの話を横聞きしていた。どうやら、超能力とかＵＦＯとか、そのへんの話が好きらしい。もしそれが目的でこのサークルに入ったんなら、それはカン違いだ…みたいなことを考えながらそれを聞いていた。しかしその実、ここの連中たちは、そうした話題が好きらしい。もしかしたら本質的には「超常現象研究会」だったのかもしれない。
しまった、と思った。僕はそういうことには大して興味はなかった。さらに悪いことに下山もそうした話題が大嫌いだったのだ。
それよりも気になる問題があった。あまり中沢さんの前でテレパシーを使うと、バレてしまう恐れが出てきたことだ。…僕は、あまり超常現象を信じている人そのものを全般的に信じていないから、しょせんそういう人たちの集まりだからといって、受け身一方の僕のテレパシーがそう簡単にバレることはないとは思っていた。かといって、万が一中沢さんにテレパシーの存在を気づかれたら、それは僕の手から離れてしまう。気になる人のことになると、余計なことまで考えてしまうものである。まあ、中沢さんとうまくいけば別になくてもいいとも考えられるが、使うようになってからいろいろとアイデアが出てきただけに、できれば仮にうまくいったとしてもテレパシーだけは失いたくないと思った。
いろいろと考えてるうちにミーティングは進み、新しく入った僕たちの自己紹介ということになった。
「えーと、梶原真樹です。」
「入った動機は〜？」突然、誰かが言った。はっきり言って、動機なんて中沢さんの後を追った以外にないのに…。
「…あ、えーと、…少し、実は、超能力とかに興味があって…」冷や汗をかきながら続けた。「…で、そういう話ならココだって話を聞いたんで…。」
「へぇ、じゃぁ…」中沢さんが、聞いてきた。「テレパシーとか、そういうの？」
「ひえっ。」ドキッとして、思わずしゃっくりのような声をあげた。「あ、…まぁ、そんなところです。」
「です、なんて。あははっ。おんなじクラスでしょ、確か。これから、よろしく。」中沢さんは、もうすっかり天文部に打ち解けているようだった。
今のところ、中沢さんに話しかけられるだけで幸せな気持ちだった。…それにしても、いきなりテレパシーの話が出るとは。僕はそのせいでミーティング中ずっと、落ちつかない気分で座っていた。