そういえば、ミーティング以来、中沢さんを見ていなかった。
今週のミーティングは、部長が都合で欠席していた。一応副部長と名の付く人がとりしきるはずなのだが、部長がいないと集まっても結局雑談で終わってしまうらしい。僕はそのダラけた雰囲気に嫌気がさして、サッサと部室を出た。
今日は、部長や中沢さんはおろか、茎沢までいなかった。いわゆる主要人物がいなくて、僕は妙な孤独感を抱いていた。そのときは、三人が一緒にいるかもしれない、なんてことは想像もできなかった。
そうして、中沢さんの姿を見ることなく、一週間がたとうとしていた。
「ノイズ」の授業。さぁ、残りの人から発信源を探さなければ…と覚悟を決めて臨んだのに、今日は意外とあっさり見つかってしまった。どうやら一番前の端っこに座っている女の子らしかった。
しかも、彼女が心で言っていることは、どうも僕に対して言っているようだった。そしてついに、その彼女の思っていることの末端あたりに、僕に呼びかけをしているらしいことを感じ取っていた。
僕はそのメッセージ通りに、放課後屋上に行った。
「びっくりした？」その彼女が出てきた。「ごめん、口で言えば早かったんだけどね。」
「…同じ学年？」おそるおそる僕が尋ねる。
「そ。クラス違うけどね。梶原くんだっけ。私は…」
「秋山…智美っていうんだ。」
僕は先読みしていた。
「あ…そう、だけど。」彼女は少しムッとしているようだった。
「ふうん…。ところで、」僕は、一呼吸置いてから尋ねた。「僕の能力…知ってるわけ？」
「うん。でもね、」彼女は、何もかも知っているようだった。「この能力を持っている人同志だったら、能力は消えないらしいよ。」
僕は、少しホッとした。「でも、こうしてこの能力を使える人同志で交信したの、梶原くんが初めてだよ。私、この能力が身についてもうすぐ十年くらいになるけど。」
「十年！…へぇ、いわゆるベテランかぁ。」僕は妙な感心をした。
それからしばらく、テレパシーの話で盛り上がった。この話題を気がねなく話せるのが、この秋山さんだけかと思うと、自然と友達意識が芽生えていった。