いつしか僕は秋山さんにいろいろと相談するようになっていた。はじめは秋山さんも親身になって聞いてくれたけど、少しずつグチっぽくなる僕にだんだんうんざりし始めてるようだった。
「…また、その子の話？」
「もう、だめ。そろそろ顔でも見ないとだめだ。気がヘンになりそう…。」口をついて出てくるのは、弱気なことばっかりだった。しかも、中沢さんに会えないことを嘆く一方だった。
「あのさぁ、」秋山さんも呆れたように言う。「電話してみるとか、自分の足で捜すとか、手紙出すとか、手段なんていろいろあるじゃん。そういうことは、しないわけ？」
「うーん…。」中沢さんに会わないことが、僕を余計に消極的にさせていた。
「ところで、あなたが考えてる『恋人』って、何なの？」唐突に聞かれて、僕は言葉に詰まった。「梶原くんはさ、中沢さんを『恋人』にしたいわけでしょ。で、その『恋人』は、あなたにとってどうあればいいわけ？」
「どうって…。」頭の中が渦巻いていた。
「どうやら、頭の中が混乱してるみたいね。」頭の中を読まれたらしい。「例えば、一緒に遊ぶ仲になりたいとか、話し相手になってほしいとか、奥さんにしたいとか…ま、それは行き過ぎとして、そういうのがあるでしょ、希望とか願望とか。まぁ、話し相手だっていうなら私も一応そうだけど…。」
僕は、チラッと「秋山さんが、僕の恋人になってくれる可能性もあるのでは」と思ってしまった。
「あのさ。」しまった、と思った。「だからって、私は恋人なんかに、ならないわよ。冗談じゃないわ。…私は別に恋人なんて欲しいなんて思ってないし、そういう関係持つことにも関心がないし、だいいち…」彼女は、言葉を切った。「…ま、いいや。とにかく、そんなほかの女の子のことでいちいち弱音を吐かれたんじゃ私もたまんないんだから。そこんとこは、考えてよね。」
そう言い捨てて、秋山さんは去っていった。