中沢さんと茎沢は、どうやら数日間行動を共にしていたらしい。
二人がもともとそういう関係で、そうした行動が公認のものなら、僕もまだ納得できた。しかし、実は中沢さんは数日も部屋を空けることになるとは思っていなかったらしい。それでも学校に出てきたところを見ると、ひどく落ち込んではいなかったようだが、でも、何故茎沢がそういう行動に出たのか、そしてそのへんのことを中沢さんは予測できなかったのか…とにかく、聞きたいことは山ほどあった。
すでに、準備は整っていた。中沢さんの現住所・帰省先・それぞれの電話番号・両親の名前…などなど、調べはついているので、とにかく片っ端から中沢さんにアクセスしようと躍起だった。
こうしてひとつ気合を入れるたびに、出鼻をくじかれてしまう。正確には、気合を入れるまでもなくうまくいってしまう、ということなのだが。中沢さんは、自分のアパートに帰っていたので、すぐに見つかった。
緊張しながら、ドアの前で待つ。ここまで来ることには抵抗はなかったのだが、面と向かって話をする…となると、また勝手が違う。どうしようなどと考える暇もないままに、中沢さんが玄関まで来た。
「どちらさんですか？」何か、警戒している口調だった。
「梶原ですけど。」
「あ、…」彼女もどうしたらいいかわからないようだった。「な、何の用なの？」
「ちょっと、話したいことがあって…いいかな。」
「あ、うん、別…にいいけど。」そう言って彼女はドアを開けてくれた。
「今日は、ミーティングどうしたの？」僕は座るところを見つけ出す前に、彼女に聞いていた。
「ん、…別に。」中沢さんはお茶の用意をしていた。
「別に…って？」僕は、しゃべりながら彼女の心も読んでいた。「確かに、あんまり話をしたことのない僕に話すことなんて何もないかもしれないけど…。」
「えっ、…うん。」中沢さんは、言葉には詰まっていた。でも、もちろん、ほとんど話をしたことのない僕に話すのをためらう気持ちもあるのだが、そういう立場の人間だからこそ話してしまいたい…という気持ちも同居しているようだった。やはり、そのへんのことを聞けるのって得だよなぁ、と思いながら、彼女の次の言葉を待っていた。
中沢さんは、ついに話しだした。その中身は以下の通りである。
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