来なかったミーティングの日は、中沢さんと茎沢、そして部長とその他数人で、車で旅行に行っていた。いろいろ都合があってその日にしか行けなかったそうだ。そしてその晩、学校前の駐車場で解散したあと、茎沢が車で送って行くと言って、中沢さんと、もう一人女の子を乗せた。先にそのもう一人の女の子を降ろした。その後中沢さんもすぐに送り返してもらえるものだと思っていたらしい。しかし茎沢は中沢さんを乗せたままドライブを始めてしまったのだった。相当遠くまで行ったらしい。海辺で夜明けを見たあと、眠くなって車中泊。結局次の日もいろいろと乗りまわされたそうだ。
それでもドライブ中は何事もなかったらしい。しかし別れ際に、茎沢の気持ちを告白されたそうだ。
その、茎沢の告白に、中沢さんは迷っているらしい。ただ、茎沢はとにかくそのドライブのことを吹聴しているらしく、それで中沢さんは極力学校に行かないようにしているんだそうだ。
「でもさ、そんな状態のままだったら、いつまでたっても不自由な学校生活になっちゃうよ。それに、話が変な方向に発展していったら…。」
「うん…、そのへんは、確かにそうなんだけど…。」とりあえず、今のところ僕とはなじんでいるようだ。ただ、彼女の僕に対する気持ちはまだ「悩みを聞いてくれる友達」程度のもののようだ。
中沢さんとの関係が、これだけで終わってしまうのだったら、ここまで来た意味がない…そう思って、僕はもう帰ることにした。
「それじゃ、とりあえず僕は帰るから。また、学校で会えることを祈ってるよ。」
「うん…。」彼女は笑顔で玄関のドアを閉めた。
僕にとっての彼女というのは、「笑顔を見ているだけでもいい」というくらいの存在だった。その彼女とこうして話ができた。本来だったら、嬉しいはずだった。けど今日話をしたおかげで、彼女の存在は「サークルの女友達」程度に落ちてしまった。身近になった分、そうしたイメージが崩れてしまった。しょせん、彼女に対する思いなんて、こんなものだったのだろうか。
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