実は、こういうこと、前にもあったんです。
それは、中学生の時───ブラスバンドのクラブで、とても温かい先輩がいました。後輩の面倒見がよくて、わたしもよく頼ったことがあります。練習が終わったあとで、先輩とよく話をしたものです。そのうち、だんだんと二人きりで話すことも多くなり、なんとなく先輩を恋人みたく思い始めていた矢先でした。
今のように、その先輩に「好きだ」って言われたんです。
その時は、わたしは先輩に恋人になってほしいと思われてるなんて最高だと思ったし、ぜひそうなりたいと思っていました。でも、そのときの言われ方が何となく唐突な気がして、わたしはすぐに答えることを避けたんです。
「もう少し…考えさせてもらえませんか？」
───それから先輩は、わたしの答えを待っているせいか、まだはっきりと言っていないわたしに会うのを避けていました。わたしはそうだってわかっていたし、それがすごく淋しかったから、早く答えなければいけないってわかっていたのに、なかなか言い出せませんでした。なにしろ、前ほど頻繁に会うことがなくなってしまったんですから。
そうするうちに、先輩と話をする機会ができました。
わたしの本当の気持ちを打ち明けました。
「今まで通りの関係で、いられませんか？」
そう言った時の、先輩の表情はなんとなく複雑でした。
わたしは、自分の言葉が誤解されたんじゃないかと思って、そのあといろいろと言い足しました。先輩のこと、嫌いじゃないんだけど、今までのままでいたい…とか、いろいろと言いました。
でも、やっぱり、何を言っても、先輩にとってはすでに効き目が無くなっていたのです。
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