───なんか、嫉妬してるらしいんだ。
「何に？」
───高谷に。
「はぁ…。そんなんじゃ、ないのにね。」
───まぁ、高谷がそう思ってるって事は、わかるんだ。一応、俺はな。でもな…。」
「（ムッ…。）でも、何さ。」
───でも、やっぱり、他人の目からは、そうは見えないらしい。…大体、わかるだろ？ そういう感じ。
「うん…まあね。」
───あいつは、特にそういう風に、見えないらしいんだ。何にもないように、見えないって。
「ああ、そう。」
───ああそうって…、一応高谷にだって関係ある話なんだよ。
「わかってるよ。でも、さ。」
───でも…？
「そういうの、やだったら、私と話をしなけりゃいいじゃん。私は、一向に、構わないんだから。」
───でもなぁ、俺の重要な相談窓口だからなあ…。
「重要な…ねぇ。」
───ひとまず、頼むよ。この場を乗り切るために…。
「さとるくんなら、大丈夫なんじゃない？ ちゃんと宮さんのことだって、好きなんでしょ。」
───…まあね。
「彼女のほうが気にしてるだけなんだったら、さとるくんが誠意を示し続ければ済むことじゃない。」
───…なるほどね。
結局、大事には至らなかった。やっぱり、あの二人は堅いかな、なんて思ってた。ほんとは、少し悔しかったんだけど。
そう…、少しだけ、私の心の片隅にいつも存在していた、さとるくんへの想い。私は、結局のところ最後まで拭いきることができなかった。だから、あんなこともあったのかもしれない。
（学校の帰り道、私は塾に行くために少し急いでいた。）
「あ、高谷。いいところで…。」
───あぁ、さとるくん。
「今、おまえん家に行こうと思ってたんだ。…急いでんのか。」
───うん、ちょっと…。
「なぁ、でも、できたら聞いてほしいんだ。」
───ごめん、ほんとに、急いでるんだ。
「あいつと、キスしたんだ。」